プロローグ
「お前は、お前らは
まっすぐ前を向いて歩いていけ……」
「ただひたすらに、ひたむきに前へ……」
―――その言葉が、彼らの決意と覚悟を決めた。
七耀暦(しちようれき)1206年、春―――あの内戦から1年半近く。
大陸最大の貿易都市、クロスベル自治州を併合し、
数ヵ月後には北方のノーザンブリア自治州を併合したエレボニア帝国は
宿敵、カルバード共和国を大きく上回り、名実共に大陸最大の国家となっていた。
その一方、帝国政府による中央集権化が加速し、税制も統一されることで、
貴族に統治されていた地方は混乱・弱体化し、新たな問題も生まれつつあった。
そんな中―――かつて内戦で暗躍し、退けられた結社《身喰らう蛇(ウロボロス)》が、
数多の猟兵団や共和国の動きに紛れるように、沈黙を破って密かに動き出し……
時を同じくして、帝都西郊・リーヴスの街に、一人の黒髪の青年が降り立つ。
《灰色の騎士》リィン・シュバルツァー。
学生の身ながら、灰の騎神ヴァリマールの乗り手として内戦終結に貢献し、
クロスベル戦線や北方戦役でも活躍した”若き英雄”―――
2月に名門・トールズ士官学院を卒業したばかりの彼が、
新たに”教官”としての道を選び、とある新設校へと着任したのである。
―――トールズ士官学院・リーヴス第II分校。
皇太子の入学を受け、本格的な軍事学校へと変革された本校とは対照的に、
訳ありの貴族子女や問題児、外国人などを受け入れた”落ちこぼれ”の分校。
分校長は、旧貴族連合軍の総司令だった《黄金の羅刹》オーレリアが務め―――
そして3つに分かれたクラスの中には、
VII組《特務科》―――リィンが担任を務める少人数の特務クラスがあった。
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